時空の旅 兵庫県西宮市 “下り酒が生んだ銘醸地”西宮・今津 ~明治時代の酒蔵~

近代史

歴史の現場を訪ねよう

兵庫県西宮市 “下り酒が生んだ銘醸地”西宮・今津 ~明治時代の酒蔵~

日本一の酒どころ 兵庫県の灘五郷

 日本で造られる酒としてまず思い浮かぶのは、米と麹と水を主原料とする、濁りのない清酒でしょう。英語圏で「SAKE」といえば、清酒を意味します。今や、清酒(SAKE)は世界の人々に愛されています。

 清酒が盛んに造られるようになったのは、江戸時代のこと。その頃から現在まで、優れた清酒の産地として名を馳せるのが、兵庫県南東部、東西約12kmに及ぶ酒造地帯です。

 この日本一の酒どころ「灘五郷」の一角をなすのが、西宮市の西宮・今津地域です。良質な米と水、優れた技術、六甲山からの恵を得て、上質の清酒を生み出してきました。

明治時代の酒蔵

 現在、西宮・今津には12の酒造会社があります。酒造業の近代化に成功したこの地域には、伝統的な酒造りと先進的な技術・設備を兼ね合わせて清酒を醸造する、大規模な工場が建っています。

 西宮に唯一残る伝統的な酒蔵の建物が、白鹿辰馬本家の「本蔵」です。寛文2年(1662)創業の白鹿辰馬本家が、明治2年(1869)に築造した重ね蔵で、白鹿記念酒造博物館酒蔵館として公開しています。館内には、明治時代から昭和30年代まで使用されてきた酒造用具が展示され、丹波杜氏による寒仕込みの工程を知ることができます。博物館の整備にあたり土中から発見された窯場遺構も保存されており、米を蒸し、酒の火入れ(加熱殺菌)に使われた施設を見学することができます。

西宮神社の太鼓橋

 全国で祀られる「えびす」の総本社として知られる西宮神社は、地元では「えべっさん」と呼ばれ、親しまれています。境内には、酒造業に携わる人々が奉納した石造物などが多数あり、商売繁盛をもたらす福の神が信仰されてきたことを伝えられます。

 拝殿の正面にある「瑞寶橋」は、西宮の酒造家・白鷹辰馬家の初代悦蔵(悦叟)が奉納した石橋です。青銅製の欄干をもつ太鼓橋で、明治40年(1907)に築造されました。悦叟の奉納品は他にもあり、拝殿の左右におかれた青銅製の神馬像は、馬の彫刻を得意とした後藤貞行が制作したものです。悦叟はまた、富岡鉄斎と深い親交を結び、鉄斎作品のコレクションを築きました。その多くは、3代悦蔵が設立した辰馬考古資料館に収蔵されており、毎年春に開催される展覧会で見ることができます。

PDFリンク 「マップ」

明治2年築造の酒蔵(白鹿辰馬本家酒造本蔵)
  • 酒造家が奉納した西宮神社の瑞寶橋
  • 西宮神社
  • 西宮神社境内
  • 西宮神社拝殿