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イベント

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酒蔵のまち伊丹を訪ねる

募集内容

実施日
2003年2月22日(土)

レポート

実施日:2003年2月22日(土)

参加人数:225名

厳冬の二月に参加者は少ないだろうとの予想に反して、多くの会員が小さな町、伊丹に集合した。その三分の二ほどの人が、伊丹は初めてだという。それほど知られていないということなのだろうか。かつて長年、伊丹に住んでいた者としてはちょっと寂しい。
集合場所の小西酒造「長寿蔵」は、酒蔵を改造したもので、一階はレストラン、二階は資料館になっている。日本酒造史学会の石川道子氏の講演「伊丹郷町と酒造り」は、たいへん興味深いものだった。江戸時代、伊丹が酒造りでいかに栄えていたかとか、「丹醸」とは伊丹で造られた酒のことをいい、全盛期には八十以上の酒造家があり、江戸に百万樽もの酒を送っていたこと。そして、町が栄えると多くの文人墨客が集まり、文化も栄えるということなどを、短時間だったが非常にわかりやすい説明だった。その隆盛時代の名残をとどめ、兵庫県内で最古の町家といわれる旧岡田家住宅や、江戸時代後期の商家、旧石橋家住宅を、ビデオと地元ボランティアの解説を交えて見学。次いで、隣接する俳諧コレクションで有名な柿衞文庫や市立美術館を観覧した。俳句や美術に興味がある人は午後の行程をキャンセルして、充分に鑑賞されたとか。昼食は弁当「伊丹郷町物語」を美味しくいただいたが、一品一品に意味づけがされていたことに気づいた人は少なかったのではないだろうか。
午後は雨が本格的になり、猪名野神社でボランティアの説明を聞いたあとは、ただ黙々と伊丹緑道を歩いた。西国街道と多田街道の交差点に「摂津の臍」といわれる辻の碑がある。京都の東寺より十里とわずかに読める。そして、コースの終着点、教善寺へ。「この寺の特徴は、本尊さんがよそから来られたらしいですわ。それが証拠に建物と不釣合いですやろ」などと、和尚のユーモアあふれる話で締めくくりとなり、雨のなかを歩いた甲斐があった。

歴史街道倶楽部会員誌「歴史の旅人」より転載