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新春 文楽鑑賞会

豊竹咲甫大夫と鶴澤清馗兄弟によるお話と三味線の解

解説/新春文楽公演第2部鑑賞
『花競四季寿』万才・海女・関寺小町・鷺娘、
『御所桜堀川夜討』弁慶上使の段、
『壺坂観音霊験記』土佐町松原の段・沢市内より山の段

募集内容

実施日
2007年1月20日(土)

レポート

実施日:2007年1月20日(土)

参加人数:42名

恒例の「新春文楽鑑賞会」は、若手兄弟のお話と三味線の解説から始まった。NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」などで広く活躍している32歳の兄、豊竹咲甫大夫が見台・床本・肩衣・腹帯・おとし・尻ひきなどについて説明。6歳違いの弟、鶴澤清馗さんは太棹三味線の解説と男女の出の音の弾き比べなどを実演。次いで宮沢賢治の詩『雨ニモマケズ』を浄瑠璃で披露した。若々しい艶のあるよく通る大夫の声と三味線の音に魅了され、兄弟の心意気に触れたひとときであった。兄弟は、三味線の名手として名高い2代目鶴澤道八の孫。後の公演では『壺坂観音霊験記』に出演している。
文楽公演『花競四季寿』秋、関寺小町の段には、三味線、鶴澤寛治(人間国宝)と人形・関寺小町、吉田文雀(人間国宝)が出演。老いた小野小町の情景は、文雀ならではのしっとりとした名演技。『御所桜堀川夜討』は竹本伊達大夫、三味線、鶴澤清治(秋の紫綬褒章)、人形・弁慶、吉田玉女。実の娘と初の対面を果たしながら、主人のために命を奪う弁慶。「外には泣かぬ弁慶が三十余年の、溜涙一度に乱すぞ果てしなき」と慟哭する大きな場面は強く印象に残った。『壺坂観音霊験記』沢市内より山の段では、竹本住大夫(人間国宝)と、住大夫と十年余コンビを組んでいる三味線、野澤錦糸が、ひときわ大きな拍手のなか、床に登場。舞台は人形・お里、吉田文雀と沢市、吉田文吾の名人お二人。「夢が浮世か浮世が夢か」住大夫の名調子とお里の針仕事の舞台。針に糸を通す・玉結びをする・針先に髪の油をつける仕草に場内から感嘆のどよめきが起きた。後半の場面、観世音の慈悲で開眼した沢市が「初めてお目にかかります」と場内の笑いを誘った。夫婦愛を貫いた名舞台である。「情」を伝え、人形に命を吹き込む文楽の「至芸」に触れ、満足して帰路に着いた。

歴史街道倶楽部会員誌「歴史の旅人」より転載