3 日本の発展をリードする組織に

 最後に、歴史街道推進協議会は「関西ローカル」にとどまっているだけではいけない組織である、という点を強調しておきたいと思います。

 例えば、六期の終わりから七期にかけ2でも一部紹介した「世界文化遺産」地域連携会議(会長・京都市長)との連携事業がスタートしています。

 協議会や近畿がこれらの活動の中心となり全国の主要な歴史の場所をリードしていくことは、会や関西の存在価値や計画のブランド力を高め、またキーパーソンとの関係を深めていく上でも大変意義深いことです。

(1)世界遺産特別法の実現、世界遺産関係予算の確保に向けて

 「世界文化遺産」地域連携会議とのコラボではまず、3でも触れた国への要望活動をおこないました。
 要望内容は各地別のもの(下表)のほか、世界遺産特別法(防災対策、災害時の特例措置、通常の国指定文化財を超える支援、バファーゾーンの法的位置づけ)や世界遺産と新幹線ネットワークによるインバウンド振興などです。
 2013年には超党派からなる世界遺産議員連盟が発足し、14年からは文化庁において世界遺産地域の活性化予算(約2億円)、また世界遺産管轄省庁の枠を超え観光庁でも初めて世界遺産関係予算が計上されています。

<近畿関連の地域別要望:紀伊山地の霊場と参詣道は前章に記載>

法隆寺地域の仏教建造物
・法隆寺への参拝客をどう地域経済に結びつけていくのか。農業など含め、世界遺産をどう地域に活かし、雇用確保などに繋げていくかという点が最大の課題です。
古都京都の文化財
・世界遺産に登録された「古都京都の文化財」以外にも,これらに匹敵する価値を有する文化遺産が多数存在するため,その追加登録が大きな課題となっています。

・木造家屋が多く、同時多発的火災からの延焼危険性が高いことから、東山地区における「水のカーテン」整備などをおこなっています。「世界遺産を1000年先にまで伝える」ためにどう最善を尽くすか。管理者や地元自治体だけでなく、国にも真剣に考えていただきたいと思います。
古都奈良の文化財
・国内外を問わず、日本の世界文化遺産巡りを促すような統一的な観光キャンペーンを展開し、それに対する補助金等の支援を要望したいと思います。

・世界遺産の近くには「ならまち」と呼ばれる歴史的景観を残す町並みがあります。市も町家の保存活動を進めてはいますが、やはり住民にとっても改修費等の問題もあり、プレハブ住宅・駐車場化が進み、古都奈良の風情は失われていっています。市民により積極的に学習機会の提供を行うなどして、「世界遺産のあるまち」という地域に対する誇りを持ってもらい、自然とその町並みを受け継ごうと思えるような仕組みを作っていければと考えていますが、なかなか思うに任せない状況があります。

(2)記念事業地域(京都・姫路・斑鳩・奈良・宇治・紀伊山地)への協力

 姫路城、法隆寺の世界遺産登録20周年、奈良の同15周年(2013)、京都・大津・宇治の同20周年、紀伊山地の霊場と参詣道の10周年(2014)、ならびにユネスコ世界遺産条約最終会合(2012)などの記念事業への協力をおこないました。

 ①ユネスコ世界遺産条約40周年最終会合(2012:京都)

 ②姫路・斑鳩(登録20周年)記念シンポジウム(2013:姫路)

 ③登録記念地域によるシンポ東京メディア訪問(2013:姫路・斑鳩・奈良、2014:京都・大津・宇治・高野)☆・・・NHK、TBS「世界ふしぎ発見」、NTB「遠くへ行きたい」、テレビ東京「和風総本家」、外国人特派員倶楽部、共同通信、「家庭画報」「サライ」「一個人」月刊「歴史街道」、「旅の手帖」、「地球の歩き方」「旅行読売」など


(左:姫路・斑鳩・奈良:NHKにて)(右:京都・大津・宇治・高野:TBS「世界ふしぎ発見」)

④世界遺産市町村サミット(2014:京都、観光庁など主催

⑤「アートクアリウム」in二条城・・・京都の登録20周年事業として2014年より開始。初年度入場者は29万人で入場上売り上げの10%(約3700万円)が二条城修復、祇園祭の鉾復元、「世界文化遺産」地域連携会議の運営に寄付された。

(3)共同の広報活動

 上記などとも関連し、以下のような広報活動を実施しました。

 ①共同記者会見(2012:東京)

 ②大阪駅・新大阪駅・天王寺駅・京都駅・三宮駅におけるデジタル・サイネージ広告(50画面:2013)

 ③関西国際空港における映像・パネル展示(2012)

 ④京都駅地下街ポルタにおける「世界遺産地図展」(2013:入場10万人)

 世界文化遺産に直接関係する歴史街道の場所は近畿6府県の30市町村、また約40の歴史資源(寺社・城郭・古道など)におよびます。全国的な連携を積極的にリードし、様々な共同事業を展開していくことの意義には大変大きなものがあると考えられます。

(4)世界遺産を核とした近畿中央部の振興

 近畿中央部の世界遺産等関連では以上に加え、南大阪関係で次のような事業を推進しています。

 ①百舌鳥古市古墳群 有識者会議、民間会議(委員・副会長)(五期―)

②ユネスコ世界遺産会議開催時にあわせたPR(関西空港・京阪神各駅:七期)


③竹内街道1400年事業への協力(七期)

 ・テレビ番組「歴史街道スペシャル 悠久の竹内街道」
 ・竹内街道シンポジウムへ(於・太子町)への協力
 ・竹内MAPの制作
 ・ウォークイベント
 ・「歴史の旅人」における特集

④その他

 1)堺における体験企画の定例行事化(てつの秘密を探る:2012ー)
 2)世界遺産関係地の畿内ネットワーク研究(広域地方計画先導事業:六期)

中期的な課題としては、世界遺産地域を核に周辺地域(例:姫路+赤穂)の連携をどう図っていくかか挙げられます。

1 近畿の歴史的地域、全体の底上げを目指して
2 「北近畿・琵琶湖」「紀伊山地」「中央部」に3分割した近畿ビジョンの定着
南北近畿の活性化を目指して