歴史街道倶楽部で楽しく歴史を体験!! 本文へジャンプ
近畿文化会との共同企画「新春文楽鑑賞会 人形遣い桐竹勘十郎師による解説」



まずは特別企画として、別室にて『壇浦兜軍記』にご出演される人形遣い桐竹勘十郎さんから、人形についての解説や文楽の見どころなどをわかりやすく紹介していただきました。眉を動かして表情を出す人形の首(かしら)の基本的な動き、左遣い、足遣いの方も交えての三人遣いの役割分担や、女性の人形には足がないのですが、着物の裾さばきで、「歩く」姿を表現することなど…。特に今回の『壇浦兜軍記』で見逃せない場面があります。人形が琴、三味線、胡弓を演奏するのですが、琴の演奏では人形の手を琴爪がついたものに、三味線ではバチを持つ手に変えるということでした。人形の演奏は、果たして…。
解説を聞いたあと、劇場に移動していよいよ鑑賞。最初の演目は、大道芸人と面売りの娘のお話『面売り』、次に元禄期に京都で起こった、お俊、伝兵衛の心中事件を題材にした『近頃河原の達引』を鑑賞。そして最後に勘十郎さんがご登場の『壇浦兜軍記 阿古屋琴責の段(あこやことぜめのだん)』。平家滅亡後、景清を追う源氏が愛人の阿古屋を捉え、居場所を探るため拷問にかけます。その拷問とは、琴・三味線・胡弓を弾かせ、その音色の乱れで嘘を見抜こうというものです。阿古屋は少しの乱れもなく、見事に弾いてみせ、疑いは晴れて釈放されます。というストーリーです。ここが、一番の見どころです。人形が琴・三味線・胡弓を弾くのに合わせて、実際に床におられる三味線の方が演奏されます。これが、人形の動きとピタリと合うのです。人形が弾いてるかのように。ご存じのように、文楽は太夫、三味線、人形遣いで成り立っています。しかし、全体での練習は1回くらいと聞いたことがあります。すべて、頭に入り、体でも覚えて、息をあわせるということなのでしょうね。職人技です。舞台の人形と床での演奏を交互に見ていましたが、人形の手がいつ変わったのか気付かず見入っていました。勘十郎さんが遣う阿古屋の凛とした美しさ、詮議に動じない姿に感動したことを覚えています。

歴史街道倶楽部では、昨年、全段を3回に分けて上演された『仮名手本忠臣蔵』を4月、8月、11月に鑑賞し、今年1月には新春文楽鑑賞会を開催、続いて4月に『義経千本桜』を鑑賞する予定でした。が、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、残念ながら中止せざるを得なくなりました。文楽劇場さんでは、夏休み文楽特別公演もすでに中止が決まっています。
でも、文楽ファンの皆様! 今なら「おうちでカンゲキ!!」伝統芸能ホームシアターをご覧になれます。ちょうど今、6月30日の12時までですが、『壇浦兜軍記 阿古屋琴責の段』を無料で動画配信されています。平成31年の国立文楽劇場初春文楽公演で上演されたものです。
美しい阿古屋をぜひ、おうちでご覧になってみてはいかがですか?